町田康 しらふで生きる を読んだ

2020年1月21日

小説家 町田康氏の、「しらふで生きる」を読んだ。

 

町田氏が、芥川賞作家である事は知っていたが、これまで町田氏の本を読んだことはなく、また町田氏が30年もに渡り1日も欠かさず酒を飲み続けていたということも知らなった。

 

その町田氏が、平成27年の12月に、突然酒を飲むのを止めようという考えが起こり、その日から飲酒を止めたそうだ。全くの突然に止めようという考えが起こり、その日から一滴も飲んでいないそう。酒を止めた事でいいこともあり、今は酒の事を考えることがほとんど無い、とのこと。

 

本の前半は、なぜ突然止める気になったのか、納得できる理由を探ることにかなりのエネルギーを割いている。

 

心理学的に説明すれば、突然止めようと思う気持ちがなぜ沸き起こったか、説明できないことはない。しかし私が感じたのはその事ではない。

 

 

町田氏は最後に、酒を飲んでも飲まなくても人生は寂しいと言っている。

酒を飲んでいた時の濃密な人間関係が次第にあっさりしたものになっていく。

同時に、今まで感じなかった意外な喜びがあり、草が生えたとか、雨の匂い、人のふとした表情の中にある愛や哀しみといった小さなものを感じるようになった。急いで通り過ぎると見落とし、見過ごすようなもの。けれどもそれこそが幸福であるということをやっと知ったのであった、とある。

 

 

 

つい最近見た、悟りの話とよく似ている。

修行を重ねたずっとその先に悟りはあると思っていたが、気が付いたら自分の足元にあった、というものである。

 

 

幸福や悟りということを少し思い違いしていると、違うものを追い求めてしまうのかもしれないと思った。